日本の学校に「合わないかもしれない」と感じた瞬間、親はさまざまな思いを巡らせます。深刻な問題が見えているケースから、理由ははっきりしないのに、どこか噛み合っていないようなモヤモヤ感まで、その感覚は人それぞれでしょう。
そして中には、日本では学校の選択肢が限られているように見え、「考える余地すらない」と感じてしまうこともあります。
私が海外で見た教育の現場は、そんな悩みに対する答えではありませんでしたが、教育を別の角度から見つめ直すきっかけにはなりました。その経験から得た視点を、お伝えします。
日本の学校に「合わないかもしれない」と感じたときに

「合わないかもしれない」と感じる理由は、お子さん一人ひとりで異なります。親として、子どもが感じている授業や友達関係の小さな違和感に気づく場合もあれば、学校全体の雰囲気や日々の生活のリズムになじめず、なんとなく噛み合っていないのでは、と感じることもあるのではないでしょうか。
親はその感覚に沿って、情報を集めたり、具体的に動いたりする一方で、理由が明確でないまま、迷うこともあるかと思います。フリースクールやオルタナティブスクールといった学びの選択肢も存在しますが、なかなか情報が限られていて、現実的な選択肢として身近に感じられない場合もあるかもしれません。
海外の教育の場で体験した「前提の違い」

私も日本の学校に馴染めなかった経験があります。日本の中学を卒業後、高校からオーストラリアへ進学しましたが、それまでの教育との大きな違いを感じました。
オーストラリアは多民族・多文化国家として知られています。私の通った学校も、異なる文化的背景を持った生徒が集まっており、肌の色や出身国、母語の違いは当たり前で、先生方は個人の意見や関心を尊重する姿勢だったように思います。例えば、学業成績が優れていることで定評のある学校だったのですが、生徒たちの希望進路は、政治家や教師のほか、ロックが大好きでドラマーになりたいという子や、卒業と同時に空軍に入ると決めている子など、それぞれ。先生方もそれを応援していました。より偏差値の高い大学を目指すことが良いことだ、という感覚を持っていた私には、生徒のやりたいことを全面的に肯定し、応援する教育に驚きを感じました。
現在、娘はシンガポールのインターナショナルスクールへ通っています。教科書やテストはなく、探究心を大切に、生徒の興味や関心を基に学びを進めるスタイルのカリキュラムです。個性が大切にされる教育だと感じています。(国際バカロレアの記事はこちら)
海外の教育を体験することで、先生方の生徒たちへの接し方や、教育における評価軸や学び方の違いを感じ、教育の前提が国や学校によって大きく異なることを知りました。
シンガポールで見た、教育環境の多様さ
シンガポールには約70校のインターナショナルスクールがあり、外国籍の子どもはシンガポールの公教育のほか、さまざまな学校から教育を選択できます。アメリカ系、イギリス系、フランス系、ドイツ系、中国系、インド系、日本人学校など、教育方針やカリキュラム、学期の開始からお休みのタイミングまで、環境は実に多様と言えるでしょう。
シンガポールには多くの外国人滞在者がいますが、日本人のご家庭も、駐在やシンガポール現地企業での就労、教育移住など、様々な背景をお持ちです。そして、それぞれのご家庭のご希望や条件に合わせて学校を選んでいます。選択肢が多いため、途中で合わないと感じた場合や、より適した学校があると考えれば転校することも、身近な選択肢として存在しています。教育環境の多様さは、家庭ごとに学校を選べるという柔軟さを示しています。
教育の選択肢を「知る」ことが親子を助けることもある

海外の教育を経験して気づいたのは、教育の前提や価値観が国や学校ごとに異なること、そして多様な背景を持ったご家庭や子どもに合わせて、教育を選ぶ柔軟な環境があることです。
日本の学校に合わないと感じた経験は、他の教育のあり方を知ることで、新しい視点を持つきっかけになることがあります。海外教育が正解なわけではありません。ただ、情報として知ることで、選択肢の幅や見え方が変わることもあるでしょう。そうした視点が、親子にとって新たな気づきに繋がるかもしれません。
この記事を書いた人
清水泰子(しみずやすこ)
シンガポール在住、3児の母。不登校の後、オーストラリア高校留学。大手日系・外資系企業を経て、現在はインターナショナル校勤務。









