前回は、国際バカロレア(IB)とケンブリッジカリキュラムを比較し、IBは「問いから探究し、世界とつながる学び」であると紹介しました。では、実際のIBの授業では、どの様な学習が行われているのでしょうか。
今回は、娘の授業を例に、IBの学びの現場を覗いてみたいと思います。
IBの授業を通じて〜世界をより良くするための学び
国際バカロレア機構は1968年に設立され、「多様な文化の理解と尊重を通じて、より良く、より平和な世界を築く」ことを教育の目的に掲げています。その理念を体現するのが「10の学習者像」。
探究する人、知識のある人、考える人、コミュニケーションができる人、信念を持つ人、心を開く人、思いやりのある人、挑戦する人、バランスのとれた人、振り返りができる人
IBの教育は、単に知識を身につけるだけでなく、「世界の中で自分にできることを考え、行動できる人」を育てることを目指しています。
これは道徳の授業で教えてくれるの?算数や国語はやらないの?一般的にイメージされる「勉強」とはあまりにも違うIBの目標に、私は疑問だらけでした。
IBの授業を覗く|問いかけから始まる探究の旅

IBは毎日の授業を通じて、どのように目標とする学習者像のような人物を育むのでしょうか?
娘が小学3年生のときの探究単元(UOI: Unit of Inquiry)のテーマは「貨幣」でした。IBの授業の出発点は問いかけ。
「貨幣について、自分の興味のあることを調べてみよう」
ある子は貨幣の歴史を、ある子はデジタル通貨を、また別の子は自国とシンガポールの通貨の違いを選びました。テーマは同じでも、出発点は各々の興味。そして子どもたちは自分の”なぜ”を大切に調査を進めていきます。探究する人の原点です。
「みんなで発表しよう」
そして次に、互いにそれを発表し合います。一つのテーマにも多角的な見方があることを知りますし、各々が調べたことを共有することで、知識量がグッと増えるのです。
貨幣というテーマを調べていくと、歴史、算数、経済、アートなどさまざまな教科にまたがっていることに気づくと思います。IBの授業は、こうした教科を横断した学びが特徴的。娘の学校では、さらに英語や算数の授業もこのテーマと連動しており、UOIが“学びの幹”となって、他の教科が枝葉のように広がっていく印象でした。
IBの学びを通じて育まれる力

娘の授業を通じて感じたことは、まず「他者へのリスペクト」が育つこと。クラスメイトが調べたことはそれぞれ異なるので、そして単に「違いを認める」ということに留まるではなく、自分自身が一生懸命に調べて発表したからこそ、友だちの考えにも耳を傾け、違ったものの見方や考えを尊重する姿勢が身に付きます。
授業の終盤には、各々が調べたことを基に、グループでポスターを制作します。ここでは意見のすり合わせや役割分担など、コミュニケーション力と協働、他者への思いやりが欠かせません。心を開く、挑戦する、といった姿勢が、こうした実践の中で自然に育っていくのを感じます。
IBの授業では、一つのテーマを掘り下げていき、クラスメイトと協力して自分たちなりの考えや答えに辿り着く過程で、10の学習者像の要素が育まれていくことがわかると思います。
親として感じるIBの魅力

IBの授業のテーマは「貨幣」だけでなく、「デジタルハラスメント」や「人体」「政府の仕組み」など、さまざまな分野に及びますが、いずれも身近なものが多い印象です。どの単元にも共通しているのは、「自分は何を大切にし、社会にどう関わるか」という問い。どんなことに心が動き、何を疑問に感じるのかを主発点に、子どもが”知識を覚えて世の中を理解していく”のではなく、社会と自分をつなげながら知識や方法を習得し”どう社会へ貢献するか”を求めていく学びと言えるかと思います。
子どもが自分の興味を見つめ、クラスメイトと協力しながら、それを社会の課題とどう結びつけていけるかを考えている姿は、人としての成長を感じます。その姿は見ていて本当に楽しく、親として、子どもの中にある可能性や輝きを感じずにはいられません。
娘の通うインターナショナルスクールでは、英語、算数、UOI(探究学習)、体育、図工、音楽、などの科目があります。生活(理科社会)の授業は、UOIに包括されている印象。道徳という授業はありません。IBは一律的な時間割りがないので、科目構成により学校の特色がでるとも言えます。
※この記事は、シンガポールでIB教育に関わる一保護者の経験をもとにしています。正式な情報は文部省が発表しているこちらをご参照ください。
この記事を書いた人
清水泰子(しみずやすこ)
シンガポール在住、3児の母。不登校の後、オーストラリア高校留学。大手日系・外資系企業を経て、現在はインターナショナル校勤務。









