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眞方アナの教えて!シンガポール vol.40

現代水墨画の父・劉国松さん来星!過去最大の展示会

御年90歳! “現代水墨画の父“と称され、台湾を拠点に世界で活躍する水墨画家・劉国松さんの回顧展が、1月13日からシンガポールで開催されます。

10日、展示会を前に行われたメディアプレビューにmangosteen clubのレポーターとして参加してきました。

大英博物館など世界の名だたる有名博物館にコレクションされている劉さんの作品。
初めて生で拝見したのですが、間近で見ると躍動感と生命力にあふれていて心が揺さぶられました。と同時に、新しい試みに挑戦し続けるバイタリティ溢れる劉さんのお人柄にすっかり惹き込まれてしまいました。

今回はmangosteen club読者の皆様にその魅力をたっぷりご紹介します🎤。

展示会場はナショナルギャラリー

回顧展はこれまで1950年代から2020年まで70年以上にわたる劉国松さんの芸術的キャリアを称えるもので、シンガポールの公立博物館では最も大規模な展示となります。(劉さんの詳しいプロフィールについてはココをチェック)

60点以上の絵画と劉さんのアーカイブから約150点が展示され、劉さんの創造的な進化をたどりながら現代の中国の水墨画の発展に対する彼の貢献などに焦点が当てられています。

会場にはシンガポールのほか中国や香港、日本(Mangosteen Club)など海外のメディアも駆けつけました。

冒頭の挨拶で劉さんは「前日に初めて展示を見せてもらったら、とても素晴らしい内容になっていて、嬉しすぎて昨晩はよく眠れなかった」と、まるで少年のようなキラキラとした笑顔で話していたのが印象的でした。

今回はメディアプレビューということで、劉さんと学芸員の方が一緒に作品解説をしてくれるという貴重な機会。
一つ一つの作品への思い入れやエピソードを語ってくださる中で分かってきたのは、劉さんは芸術家人生をかけてまるで科学者のように“実験”し続けてきたということ。

劉さんは当初伝統的な筆ペンとインクを使用していましたが、それらの限界を感じ、筆ペンとインクの枠から飛び出さなければならないと気づいたと言います。
そこで、1960年代から様々なツールや種類の紙を使って実験を始め、独自の画材や新しい技法などを開発してきました。

その一つが紙です。

劉さんは様々な素材や質感を探求し、「Liu Kuo-sung paper(劉国松紙)」を発明しました。

Liu Kuo-sung paperを使った作品 Sturdy Grass In High Wind(1964)

会場では一人一人その特別な紙を触らせてもらうことができ、私もLiu Kuo-sung paper(劉国松紙)を触らせていただくことに!

ツルンとしたコピー紙などとは異なり、中国の提灯を作るのに使われるような少し厚めの綿紙で、表面に粗い繊維が組み込まれているのですが、触った感触は意外とさらさらしていました。

会場には劉国松紙を用いた作品も展示されているので、絵を見る際ぜひ間近でご覧ください

Liu Kuo-sung paper

そして、なんといっても彼の作品で魅力的なのが、「水擦り」という技法を使ったもの。

水にインクを垂らし、その上から平らな紙を置き、水面にできたインクの模様を写しとります。これを3回繰り返しできたのが・・・こちらの作品です。

“水擦り”の技法を用いた作品 Melting Snow Trickles Through the Desert(1983)

水墨画は通常黒色で表現しますが、劉さんは白色でどう表現するかということにこだわっています。

繰り返し水擦りした際にできるつなぎ目の部分はブラシでぼかしたり、雪を表現するのにスプレーを吹きかけたりと様々な技法が施されています。

会場には劉さんが水擦りなどの技法に挑戦するためにお風呂場など様々な場所で実験を重ねてきた様子のわかる写真も展示されています。

これまでこのような記録は展示会ではほとんど見せたことがないそうで、今回はとても貴重な展示内容が含まれています。

続いて皆さんにご覧いただきたいのが、こちら!

Moon Walk(1969年)

「ああ、これは・・・!」と、思われた方多いと思います。

そう、1969年アポロ11号の宇宙飛行士が初めて月に降り立った時の作品です。

劉さんはその前年、初めて月の軌道を周回した宇宙飛行士が撮影した地球の写真に深く影響を受けたそうで、宇宙時代に生きたアーティストとして、この時代の特徴を残したいと思ったそうです。そこで、60年代終わりから惑星を描いた水墨画を制作するようになりました。

1969年制作の「Moon Walk」は雑誌「LIFE」の写真の切り抜きを自身の作品に貼り付けたコラージュとなっています。学芸員の方は「この作品は中国の現代美術シーンの歴史において非常に重要」と話していました。

右:雑誌「LIFE」

ところで、劉さんは世界最高峰のエベレストに登った事もあるそうです。なんと70歳で!

どんなに長くても滞在は30分と言われていた雪山で2時間半もの間、我を忘れて景色を眺めるのに没頭していたというのです。

「雪山が見えてきたら太陽が山を照らし白く輝いていた。その後雲がかかってきて真っ黒になり、山は刻々と変化を続けて美しかった。」と、イキイキと話していました。

長時間の滞在で左耳の聴力を失ってしまったそうですが、その時の感動が忘れられず、今も作品を描き続けています。というのも、90歳になった今もご自身が満足できるものが完成できていないそうなのです。満足できる作品が出来上がるまで作り続けたいとおっしゃっていたのが印象的でした。

Snowscapes Reaching Beyond the Clouds (2020年)

取材中、劉さんは背筋がピンとしていて立ち姿がとても素敵でした。そして、後進の育成のため長年教鞭をとっているということもあってか、一つ一つの作品に関するお話がとても面白く溌剌とした方でした。2時間以上のプレビューでしたが、最後までほとんど椅子に座ることなく私たちメディアに向けて時間ギリギリまで作品に込めた思いを熱く語ってくださいました。

最後にMangosteenClubの読者のために個別インタビューにも答えてくださった劉さん。なんとお肉が大好きでよく食べるそうです。元気の源はお肉!?なのかもしれませんね!

日本にはこれまで2回ほど訪れたことがあり、お刺身がお気に入りだそうです。

90歳を超えた今でも昼夜問わず、やりたい時にやりたいだけ作品作りに取り組んでいて、「3日間くらい絵を描かなくなると寂しくなるんだ」と話しているのを聞き、本当に絵を描く事を心から愛している様子が伝わってきました。

回顧展を記念してナショナルギャラリーには劉さんの作品20点寄付されました。

ナショナルギャラリーは寄付をきっかけに水墨に関する展示やプログラムをさらに充実させ、来館者に水墨画の多様性と美しさを紹介できるようにしたいとしています。

ナショナルギャラリーに寄贈された作品:Dance of the Black Ink(1963)

劉国松さんの回顧展「LIU KUOーSUNG EXPERIMENTATION AS METHOD」は1月13日から11月26日まで。

In the Midst of a Beautiful Spring(2008)

ちなみに、今月26日までナショナルギャラリーでは毎日夜7時半から深夜まで光の投影ショー「Light to Night 2023」が開催されます。

26日まで週末(金曜〜日曜)は劉さんの展示会などの開催時間を延長するそうなので、光のアートと合わせてナショナルギャラリーのイベントに足を運んでみませんか?

National Gallery Singapore

Official Blogger眞方富美子

夫の駐在帯同で2020年9月、3歳目前の息子を連れて初のシンガポールへ。2週間の隔離施設滞在を終えて、ようやく始まった新生活。鮮やかな花に彩られ、独自の文化を持つ魅力いっぱいのこの国で知りたいことが沢山!お得な生活情報、グルメ、美容、子育て……、日々の暮らしで気になるシンガポールのあれこれを母、主婦、女性目線で直撃レポートします。一緒にシンガポールライフを楽しみましょう♪ 個人インスタ:@fumiko_magata もチェックを

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