シンガポールこころの相談室 | 心理士・長谷川由紀 Vol.01

はじめまして、米国ニューヨーク州公認心理士の長谷川由紀です。

これまでニューヨークとシンガポールに合わせて10年以上暮らし、海外で暮らす日本の方々にカウンセリングを提供してきました。この経験を活かして、シンガポールでの生活を楽しむために役立つ情報をお届けしてまいりますので、どうぞよろしくお願いします!

初回の今回は、シンガポール移住直後のメンタルケアについて書かせていただきます。

シンガポールに移住!始まった新生活、ワクワクも多いけれどストレスも多い?!

新生活  シンガポール ストレス

ニューヨークとシンガポールでカウンセラーとして働く中で、駐在員、駐在員のご家族、留学生、現地就職や国際結婚など、さまざまな理由で海外にいらした方々からたくさんのご相談をいただきました。

その中でよく耳にしてきた言葉が、

「新生活、想像していたよりも辛い…」

というもの。

駐在員、現地就職、留学などでいらした方は、いち早く職場や学校に慣れてパフォーマンスを出さなければならないというプレッシャーが強いでしょう。

駐在員のご家族としていらした方は、伴侶が朝から夜までほとんど家にいない状態の中、生活の立ち上げ、子供の学校探しや各種トラブルへの対処、勝手のわからない土地での買い物、キャリアを中断したことへの不安等、大変なことが多いと思います。

そして、どなたにも共通することですが、新しい土地なので慣れ親しんだ友達や家族がおらず、ちょっと気分転換をしたり悩みを相談することも難しいものです。

新生活が引き金になって、うつや不安症、適応障害を発症することも…

うつ 不安症 適応障害 海外生活

こうしたストレスが原因となって、日本では元気に暮らしていた方がうつや不安症、適応障害を発症することがあります。そしてこれは決して珍しいことではありません。

日本では問題なくできていた仕事や家事が急にできなくなったり、夫婦仲が悪化したり、育児の悩みが増えたり、涙することが多くなったり…

こうしたトラブルに直面したとき、多くの人が悩みを一人で抱えてしまい、「こんな思いをしているのは自分だけ…」「他の人はみんなもっとうまくやれている…」「自分は弱いからいけないんだ…」と孤独感にさいなまれたり、ご自身を批判してしまうものです。しかし、海外生活中にこうした問題や症状が出てくるのは、とてもよくあることだということをまずご理解いただきたいと思います。

また、悩んだ末、「シンガポールに来たことが間違いだったのか?」と海外移住をしたこと自体に問題があったのかと感じる方も多いかと思います。

しかしカウンセリングの観点からすると、今感じているつらさや苦しみはご自身を深く理解するチャンス、そして海外生活だけでなく、今後の人生全般をより楽しく生きるためのヒントになると考えることができます。

海外生活のピンチは人生のチャンス?!

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シンガポールに住み始めてさまざまな困難に直面し、「こんなはずではなかった…」と思ってしまった時。一見ピンチに思えるその状況は、もしかしたら自分を深く理解し、人生をより良く過ごすためのヒントになるかもしれません。

自分の「癖」に気付く

普段、意識することは少ないかもしれませんが、誰もが特有の「考え方、感じ方の癖」を持っているものです。「癖」というとネガティブに聞こえてしまうかもしれませんが、癖を持っていること事態はあたり前のことで、全く悪いことではありません。

しかし、この「考え方、感じ方の癖」の中に、「人生を生きづらくしてしまう癖」が入り込んでいる場合があります。

こうした癖は長い時間をかけて身についたものなので、ご自身で意識することはなかなか難しいものです。そして人生を生きづらくしてしまう考え方、感じ方の癖があっても、日本の慣れ親しんだ環境では、これまでなんとかやり過ごすことができてきたという場合があります。

しかし、海外移住という大きな環境の変化が引き金となって、これまでのようにやり過ごすことができなくなり、さまざまな問題に直面するということがあります。

心の癖を修正するチャンス!

このように、慣れない土地でさまざまな問題に向き合うのはつらいことではありますが、日本にいたときには見えてこなかった「人生を生きづらくしてしまう癖」が海外生活によりはっきりと見えるようになった、ととらえることができます。そして、その癖がはっきりと見えるからこそ、「より楽しく生きるための考え方、感じ方」に変えていくこともできるのです。

このように心の癖を修正していくことによって、海外生活で見えてきた問題を転機に、より楽しい生き方ができるようになるのも珍しいことではありません。今現在、問題を抱えて苦しんでいらっしゃる方には信じがたいかもしれませんが、私はこれまでカウンセリングを通してお会いした多くのクライアントさんたちに、ピンチはチャンスに変えていく姿を見せていただき、とても勇気づけられました。

海外生活ならではのメリットを使いこなそう!

健康保険 海外旅行保険

とはいえ、ご自身の心の癖を知り、ポジティブに転換するのは楽な作業ではありません。ご自身でなんとなく癖が見えているけれど、うまくとらえきれなかったり、どう変えていったら良いか分からないといったこともよく起こります。

そのようなときは、お近くの医師やカウンセラー(心理士)に相談をしてみることをおすすめします。

カウンセリングは日本では保険が適用されないケースが多く、それが一つの要因となって受診のハードルを上げていると言われます。しかし、たとえば海外駐在やその帯同でいらしている場合には、会社から支給されている海外旅行保険や現地民間保険、また会社の治療費負担制度によって、カウンセリングの費用が補償されることがあります。また現地就職や国際結婚、留学等でいらしている場合にも、お手持ちの現地民間保険でカウンセリングが補償されることがあります。

そうした海外生活ならではのサポートを使いながら、つらさをぜひチャンスに変えていただければと願っています。つらいと思っていた海外生活が、人生の宝物のように思えるときが来るかもしれません。

心理についてもっと知りたい方は、『米国ニューヨーク州公認心理士 長谷川由紀のブログ』も合わせてぜひご覧ください。

米国ニューヨーク州公認心理士・カウンセラー 長谷川 由紀 | 米国ニューヨークで10年ほど暮らし、カウンセラーとして多くの相談を受ける。その後、現在はシンガポールに移住し、当地でクリニックを開業。鬱(うつ、うつ病)、不安症、パニック障害、夫婦関係、職場関係、育児、家族関係、強迫性障害、人格障害、適応障害、キャリア、転職、接触障害、依存症(アルコール、セックス、タバコ等)、孤独感、などさまざまなお悩みをご相談いただけます。駐在員やそのご家族(駐妻、駐夫)のお悩み(海外生活、赴任生活、育児等)も数多く扱ってきました。日本語、英語でご対応いたします。執筆 | 米国ニューヨーク州公認心理士・カウンセラー 長谷川 由紀

2023年夏より夫の駐在に伴い、4ヶ月の娘と猫と共に シンガポールへ。当地にてクリニックを開業。渡星前にも駐在帯同で10年ほどニューヨークに暮らす。

【メッセージ】海外・駐在生活は楽しいときもありますが、独自のストレスも多いもの。異文化への適応、キャリア、育児、夫婦関係、対人関係など、さまざまなお悩みにカウンセラーの視点でお答えします。みなさんのシンガポール生活が楽しいものとなりますように。

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