emgalleryは、アジア各地の伝統クラフト職人とコラボし、テキスタイルとライフスタイルグッズ、ファッションアイテムを展開しているショップ。
洗練されていながら温もりを感じるコレクションの数々は、一つ一つ丁寧に企画、商品化されたもの。
emgalleryのこだわりある作品はどのようにして生まれているのでしょうか?
昨年から続くコロナによって、何か変化はあったのでしょうか?
emgalleryのオーナー&デザイナーである中村恵美子さんにお話をうかがいました。
現地のコミュニティをサポートする商品づくり
マンゴ編集
お店にあるもの全部素敵ですが、特に布のデザインや色に目を奪われました。中村さんが着ていらっしゃるお洋服も素敵です!
中村さん
ありがとうございます。これらは布もすべてオリジナルなんですよ。職人と協力して、糸を染めるところから作り上げています。
マンゴ編集
糸を染めるところから!すごいですね。一緒にお仕事する職人さんはどんな方たちなんでしょうか? どうやって探されたんですか?
中村さん
職人を探してさまざまな地を巡るなかで、特にラオスの染織の技術、カンボジアの人々の伝統工芸を復興させようという熱意にとても感銘を受けたんです。信頼できる相手と継続的にお仕事をしていきたいので、現地のマーケットからショップ、何代も続く工芸一家まで、私の創作を理解してくれる職人・工房をくまなく探しました。好奇心旺盛なので、こういうリサーチ作業も大好きなんですよ。
マンゴ編集
伝統工芸にはもともと興味を持っていらっしゃったのですか?
中村さん
はい。もともと工芸アート、特に布が非常に好きでした。旅も大好きで、異文化に接することに大変興味を持っていました。それもあって「伝統工芸をおしゃれにプロデュースしたい」「素敵な布を作りたい」という思いが強かったんです。その思いを胸に実際に現地を訪れたのですが、そこで伝統工芸を巡る課題に直面しました。
マンゴ編集
課題……具体的にはどういった課題ですか?
中村さん
職人としての腕は確かで作品がどんなに素晴らしくても、それを収入、そして生活の向上へとつなげることができていないのです。このままだと、せっかくの技術・スキルが継承されないまま途絶えてしまう。
私は伝統工芸が大好きなので「作品を生み出す土壌を絶やしてはならない。伝統工芸を未来につなげなければ!」という使命感に駆られました。伝統工芸を進化させて現代のライフスタイルにフィットするコレクションを作ること、そして伝統を未来へとつなげるのが私の役割なのだと痛感しました。
マンゴ編集
なるほど。伝統工芸の存続自体が危うい状況なんですね。
中村さん
たとえば、異素材を組み合わせて布を織ってみたり、原料の組み合わせを変えることで新しい素材を作ったり。そういった新しい発想をこちらから提供すれば、伝統工芸の活性化につながります。また、現地の職人と直接仕事をすることで、彼らとその家族、コミュニティー全体の生活を向上させるのも、事業をするうえで大切なミッションだと思っています。
マンゴ編集
素晴らしい取り組みですね。
中村さん
ボタンなどの小物もなるべく現地で作ったり、現地で購入できるものを使ったりしています。小さなことかもしれませんが、その積み重ねが現地の内需につながればと思っています。
マンゴ編集
emgalleryの商品を購入することで、私たちも職人さん、職人さんの家族、それから現地の経済をサポートできるということ。つまりフェアトレードでしょうか。
中村さん
その通りです。商品のクオリティー向上のための指導、英語の指導なども彼らの生活の向上につながります。何よりも彼らとのポジティブなコミュニケーションが希望につながり、生活向上の意欲になればと思っています。
emgalleryのコレクションができるまで
マンゴ編集
emgalleryで展開する「コレクション」とはどういったものですか?
中村さん
テキスタイルデザインがベースとなるホーム&ファッションのコレクションです。具体的には「布のある暮らし」「布を着る」というコンセプトでコレクションを展開しています。職人・工房のくせや特徴などもあるので、制作していくうちに「このデザインはあの人にお願いしよう」「この織りはこちらの工房にお願いしよう」という制作プランが見えてきます。それらのコラボレーションが重なってemgalleryのコレクションができ上がっていく。実は私が一番わくわくするのが、このコレクション作りなんです。
マンゴ編集
コレクション作りは、実際どのように進めるんですか?
中村さん
まず、テキスタイルを制作するために、こちらでテーマを決めてストーリーボードを作成します。ストーリーボードとはムードボードともいわれているものです。テーマのイメージやムードを伝えるために雑誌の切り抜き、ネットにあるイメージ、デザイン画などを使ってボードを作成します。
マンゴ編集
まずはテーマをビジュアル化するということですね。
中村さん
そうですね。ストーリーボードとともにカラーパレットも作成します。カラーパレットとは、色の素材集のようなもの。紙のカラーチップより糸のほうが織り手に伝わりやすいので、刺繍糸で作成しています。
マンゴ編集
実際の糸で色のイメージを共有するということですね。
中村さん
それから、そのテキスタイルで何を作るのか(クッション、壁掛けなど)を私がデザインに落とし込みます。それらを持って現地に行き、染織の人々と打ち合わせます。
マンゴ編集
実際に現地で打ち合わせをするんですね。
中村さん
現地に行くことの意義はとても大きいです。空気も違いますし、ペースも違います。染織の光景、匂いは感覚に訴えるものがあります。そうした中で浮かぶインスピレーションや発想はとても大事です。実際に現場で思いつくデザインもたくさんあるんですよ。
コロナを機に新しいプロジェクトをスタート
マンゴ編集
この1年はコロナの影響もあり、現地に行けない状況が続いていますが、現在どういった取り組みをされていますか?
中村さん
現地では多くの織り手が田舎に戻ったきり帰ってこない、観光客は来ない、現地でのエコノミーは著しく低下……と、こちら以上に厳しい状況となっています。そんな中で新しいものを作らないで今あるものを使って何かできないか、という発想から「端切れプロジェクト」を始めました。
マンゴ編集
端切れプロジェクト! 一体どんな取り組みなのでしょうか?
中村さん
新しいものを作るのが今は難しいので「端切れを使って商品を作ろう」というプロジェクトです。emgalleryの洋服を作る際、シルクの端切れがたくさん残ります。その端切れを使ってシルクマスクを作ろう、という企画が走り出しました。作ってみたら、スカーフ感覚のおしゃれなマスクになりました。
マンゴ編集
まさに今の時代にいろんな面でフィットした商品ですね! とってもおしゃれで他にはないデザインが魅力です。
中村さん
シルク地にコットンの裏地(今は4レイヤー)+フィルターで安心感を感じていただくと同時におしゃれも楽しんでいただけます。天然素材のみで作ったマスクは軽くて、着け心地も抜群ですよ。こうしたマスク制作も現地の制作継続につながっています。今後も端切れプロジェクトを充実させて、ポーチ、アクセサリー、パッチワークなど展開していきたいと思っています。
マンゴ編集
楽しみですね。この1年、コロナの影響は避けられなかったと思いますが、emgalleryのこれからについて教えてください。
中村さん
私自身、またemgalleryというお店、ブランドにとってお店の意味、消費の意味を考える良い機会だったと思っています。消費がなくては需要は生まれず、作り手たちの仕事もなくなります。私たちにとってお店は工芸家たちを支える場であり、需要を作り出すことは私たちのミッションでもあります。初心に戻って、今後のクラフト産業を支える方法やコレクションを考えていきたいと思っています。
マンゴ編集
ありがとうございます。では、最後にマンゴスティン倶楽部の読者の皆さんにメッセージをお願いします。
中村さん
emgalleryと職人によるコラボレーションをぜひショップで一度ご覧ください。かわいい小物からインテリア、お洋服まで布とクラフトの世界が広がります。今後はウェブ発信&ショップの強化を進めながら、ホームライフを提案する新しいコレクション、アーティストやお店とのコラボレーションなどを展開していく予定です。これからのemgalleryに、ぜひ注目してくださいね。
マンゴ編集
中村さん、この度は貴重なお話をどうもありがとうございました!
ラッフルズホテルのアーケードにある「emgallery」。
今回は特別にマンゴスティン倶楽部読者限定、3月末の期間限定でホームアイテムのクッションカバー、テキスタイルを15%OFFしてくださることになりました。
ぜひこの機会に一度お店に足を運び、中村さんがデザインされた商品の数々を手に取っていただけたらと思います。